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他者の革をはいで身に纏うことは
社会と自己の間にある狭間を補おうとする行為の一つである。
アイデンティティの喪失というアイデンティティによっていったい何を獲得するのか。
それは、現代を生き抜く女性達にとって、防護服であり続ける。
それは、現代を生き抜く女性達にとって、絶対的な家来である。
それは、現代を生き抜く女性達にとって、生きるということである。
美しい鎧を纏ったワニになりきることで私たちは逆説的に、流動に身を任せる自己をその中に発見する。
ただの土くれやブロンズで作られた、使うことも出来ない無価値なアイテムの表面には
高級品であるクロコダイルの柄が施されている。
はなして価値とは何者なのか。
疑似体験は見るものに記憶と経験のずれを生じさせ、その両者に懐疑的な視点を生じさせる。
きわめて現実的なブランド品と、芸術作品と。
ブランドとは何か、価値とは何かを問いかける試み。
かさぶた、唾液、血液、一度自己から切り離されたとたんに
“それ”は異物となり、再び元に戻ることをよしとされない。
自己を形成したもの達が経過とともに他者となり、異物となる。
常に更新を強制されたその脅迫とも思われる観念は、自己と他者の間をより鮮明に描き出そうとする行為となる。
自己であったものは、必要以上に存在を否定されることで、自己の存在をより鮮明に描き出す。
衣服という第二の皮膚を脱皮し、ヒトは第三の自分を発見しようとする。